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大阪高等裁判所 昭和61年(く)137号 決定

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、申立人作成の抗告申立書記載のとおりであるから、これを引用する。

論旨は、その趣旨甚だ明確を欠くが、要するに、本件保釈請求を却下した原裁判所には、右保釈請求事件につき判断をする資格がなく、また、職権による保釈を許可しなかつた原判断も相当でないから、その取消しを求める、という点にあると理解される。

そこで、検討するのに、当裁判所が職権により取寄せた本件本案事件の記録によれば、申立人は、昭和六一年九月一二日大津地方裁判所(裁判官梶田英雄)により、常習累犯窃盗被告事件につき、懲役二年(未決勾留日数四六〇日算入)の刑に処せられ、右判決に対し最高裁判所に跳躍上告を申立てたものであること、申立人は、同年一〇月一日付書面により最高裁判所に対し保釈の請求をしたが、右時点においてはいまだ記録未送付であつたため、右書面は原審に回付され、原審において同月一五日付の保釈請求却下決定がなされた結果、申立人は、同月二二日右決定に対し本件抗告を申立てたこと、他方、本件本案記録は、その後原審から最高裁判所に送付され、同月二八日同裁判所に到達したが、同裁判所(第二小法廷)は、同年一一月一一日、同裁判所に対して新たになされた申立人の保釈請求(同年一〇月三〇日受付)を却下する決定をしたことなどの事実が明らかである。

しかして、刑事訴訟法及び同規則は、被告人の身柄確保に関する判断権を原則として当該被告事件の係属する受訴裁判所に帰属させ、第一審の第一回公判期日前及び上訴中で記録が上訴審に未到達のもの等について若干の例外を認めているにすぎないところ(刑事訴訟法二八〇条一項、九七条、同規則九二条)、前記のとおり本件については、本案の被告事件の上級審たる受訴裁判所(最高裁判所第二小法廷)がすでに保釈請求却下の決定をしているのであるから、原審の保釈請求却下決定に対する抗告審にすぎない当裁判所としては、保釈の許否につきこれと異なる判断をすることは許されないと解される。従つて、本件抗告は、所論の内容につき判断するまでもなく、その理由のないことが明らかである。

よつて、刑事訴訟法四二六条一項により、本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官松井 薫 裁判官木谷明 裁判官生田暉雄)

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